将棋川柳・第5乃句『江戸っ子の気性に合うが飛車の利き』(誹風柳多留百二十一編第七丁)

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将棋川柳・第5乃句『江戸っ子の気性に合うが飛車の利き』(誹風柳多留百二十一編第七丁)

『江戸っ子の気性に合うが飛車の利き』

川柳というのは、実に見た目のとおりといいますか、感じたままを切り取って句にしたものですが、その五・七・五の言葉は高段者の手のごとく、多くの意味を含んでいます。いや、意味というより"味"と言うべきかもしれません。

今回の句、これはどちらかといえば意味的にも味わい的にもシンプルで分かりやすいもの。飛車という威勢のよい駒を、江戸っ子の気性になぞらえた句になっています。

「オッオッオッ、どいたどいたどいた~! そこをドキャがレェ~、ベラボーメ!!」
「オ~ヨ、邪魔だ邪魔だ邪魔だ~! 粋なお兄イさんのお通りだ!!」

イメージとしては、往来を急いで現場に駆けつける火消し衆といった感じです。確かに飛車という駒は縦横無尽に動き回りますから、江戸っ子の気性にオーバーラップしたとしてもぜんぜん不自然ではないのですね。

今回も、町の将棋道場で見掛けた局面から飛車の性能が発揮された局面を見てみましょう。

今、図1を迎え先手の人が考えています。

【図1は△6六歩まで】

局面は△6六歩と垂らされたところで、後手の狙いは、次に△4六角と出て(詰めろ)、△3六桂▲3九玉△2八銀の詰みにあります。それを防いで、図1で▲4七銀と守ると、△6七歩成▲同金△9九角成と香を取られ、後手に攻め駒が増え(飛車と銀・桂・香の3枚換え)、ややこしくなりそうです。

しばらく考えた先手は、図1で▲5六飛と打ちました。これは、角取りの先手を取りながら△4六角も防いだ手。飛車は敵陣に打ちたくなるもので、それを自陣近くに打つのはなかなかできません。

火消し衆ほどの威勢はありませんが、図1以下、△3三角▲6六金(図2)と進んでみると、▲5六飛が盤面全体を制圧する好手だったことが分かります。5六の飛車と6六の金が中央を制圧し、後手にはこれといった攻めがなく、手に窮しています。半面、先手には、▲7四とと出て①▲8一飛成の攻めや、②▲6四歩~▲6三歩成が約束されています。この攻め筋が実現可能になったのも、もとは▲5六飛のお蔭なのです。

【図2は▲6六金まで】

このように、飛車は魅力的な駒といえるのですが、これが"角行"だとそうはならず、ヤッパリおかしいのですネ。一度、表題の句を角行に代えて読んでみてください。その違いが分かると思います。

実はこの句、川柳の衰退期といわれる天保年間(主に1830年代)のものです。それだけに古川柳の味を伝える佳句と言われているのです。

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