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藤井、歴代5位となる28期目の獲得 ~王将戦振り返り~

 藤井聡太王将に永瀬拓矢九段が挑戦したALSOK杯第74期王将戦七番勝負。タイトル戦で何度も顔を合わせてきた両者だが、二日制七番勝負は初めてだ。

ALSOK杯第74期王将戦七番勝負第1局

 第1局は静岡県掛川市「掛川城 二の丸茶室」にて。相掛かりから先手の永瀬が1筋を攻めてペースをつかむが、藤井も力強い金の動きで持ちこたえる。

【第1図は▲7八同玉まで】

 ここから△4四金▲3三歩△同桂▲4六飛△5四金打と、強固な壁を築いて後手が負けにくい形になった。元々は1三まで追いやられていた金だが、見事に中央を制圧。難戦をうまくまとめた藤井が開幕戦を制す。

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写真:琵琶

ALSOK杯第74期王将戦七番勝負第2局

 第2局は京都府京都市「伏見稲荷大社」にて。横歩取り対青野流から、難解な中盤戦となった。歩の手筋を駆使して、藤井が少しずつリードしていく。

【第2図は△8一飛まで】

 ここから▲3二と△同玉▲2三角がさわやかな寄せ。△同玉▲4一角△3二歩▲2四歩△同玉▲3二角成で、たちまち受けの難しい形に追い込んだ。中盤で抜け出した藤井が2連勝。

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写真:飛龍

ALSOK杯第74期王将戦七番勝負第3局

 第3局は東京都立川市「オーベルジュ ときと」にて。角換わり腰掛け銀対右玉の戦いに。永瀬の猛攻を、藤井は右玉らしく玉の広さでしのぐ。

【第3図は△4四同玉まで】

 ここで▲4六馬で寄っていそうだが、△4八歩成▲4五飛△3四玉▲3五馬△3三玉▲4四馬△4二玉で際どくしのいでいるようだ。実戦は▲3八銀△3九竜▲4七銀と息長く指そうとしたが、△5五桂が味の良い攻防手。▲4六銀に△4五歩と打って、後手玉が寄らない格好になった。絶妙のしのぎで耐えた藤井が3連勝。

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写真:銀杏

ALSOK杯第74期王将戦七番勝負第4局

 第4局は大阪府高槻市「摂津峡花の里温泉 山水館」にて。角換わり腰掛け銀の研究勝負となる。

【第4図は▲3四銀まで】

 先手の攻めが続くかの勝負だったが、ここから永瀬が正確な受けを見せる。△3三歩▲5三香△6二金▲4二銀△3二玉▲5一銀不成△4一香▲4二歩成△同香▲4三歩△5一飛で、先手の攻めを余せる形になった。反撃の余裕を得てからは素早く寄せて、永瀬が1勝を返した。

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写真:翔

ALSOK杯第74期王将戦七番勝負第5局

 第5局は埼玉県深谷市「旧渋沢邸 中の家」にて。後手の藤井は2手目に△3四歩を突いて雁木へ。棋士デビュー以来ずっと2手目は△8四歩を突いてきたが、ここにきてスタイルを変えてきた。永瀬も意表を突かれたようで、序盤から細かく時間を使っていく。少しずつポイントを稼いだ藤井がリードを奪い、優位に立った。

【第5図は▲4五歩まで】

 大きく駒得した後手が優勢で、あとはどう決めるか。△7五歩が急所の攻め。▲同歩なら△7六歩から△8四桂がある。実戦は▲2三と△同金▲3二銀と攻めたが、△7一飛が絶好の活用だ。この後は7三の桂をさばいて飛車を切る寄せを実現し、後手の快勝となった。

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写真:八雲

 七番勝負は4勝1敗で藤井が防衛。通算28期目のタイトル獲得で、22歳の若さながら谷川浩司十七世名人を抜き歴代単独5位となった。敗れた永瀬だが、名人戦でも挑戦を決めており、両者の対決はまだ続く。

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