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ヒートアップする頂上決戦 第6期叡王戦五番勝負展望

 新しく株式会社不二家の主催に変わった第6期叡王戦。その五番勝負が7月25日(日)、東京都千代田区「江戸総鎮守 神田明神」で開幕する。今期、豊島将之叡王に挑戦するのは藤井聡太王位・棋聖。両者は現在、お~いお茶杯第62期王位戦七番勝負で熱戦を繰り広げており、今度は保持者と挑戦者の立場を入れ替えて相まみえる。

最強の挑戦者

 藤井は今年7月、第92期ヒューリック杯棋聖戦で渡辺明名人の挑戦を退け、史上最年少でタイトルを防衛し、九段に昇段した。4年前の第3期、初めて叡王戦に出場した際は四段戦予選に名前があったが、周囲の予想を遥かに超える速さで頂点まで駆け上がっている。いまだ通算勝率は8割を超え、現時点ですでに今年度の局数、勝数、連勝の3部門のランキングで1位。文字通り、最強の挑戦者である。

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撮影:夏芽

 藤井は今期、3回目の本戦トーナメントで初めて挑戦権を獲得した。段位別予選では師匠の杉本昌隆八段に勝ち、本戦では前叡王の永瀬王座を破った。ただし、挑戦権までの道のりの中には、苦しんだ将棋もあった。

【第1図は▲3八桂まで】

 第1図は挑戦者決定戦の斎藤慎太郎八段との一戦から。角換わり腰掛け銀の将棋で、藤井が局後のインタビューで「タイミングよく動かれてしまった」と振り返るように、途中は斎藤慎八段が優位に進めていた。

 実戦は図の局面から△6五桂▲6八銀△4四角と進んで形勢の針が動く。3手目の△4四角が▲2六飛で取られる筋を避けながら、角交換を迫った好手。▲6八銀は自然な一手に見えたが、先手は銀を引かずに▲1四歩と端を攻めるべきだった。

 この一局は逆転勝ちの内容だが、藤井の強さは、苦しくなっても簡単には崩れず、一瞬のチャンスで流れを引き寄せられる点にある。高勝率を維持する要素のひとつだ。

叡王連覇に向けて

 「序盤、中盤、終盤と隙がない」は、いまや豊島の強さを示す代名詞になっている。前期、挑戦者として永瀬拓矢叡王に挑んだ七番勝負は、千日手1局、持将棋2局を含めた異例の「第9局」までもつれ込んだ。そのフルセットの激闘を制し、二冠に返り咲いた豊島は、昨年、もうひとつのタイトルである竜王戦で初防衛を決めた。これまで立て続けにタイトルを奪い、一時は三冠を保持していたが、不思議と防衛戦だけは結果が出ず、大きな課題をひとつクリアしたと言える。

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撮影:夏芽

 叡王戦は第3期からタイトル戦に昇格したが、まだ防衛、連覇を果たした者はいない。豊島にとっては、その記録に向けた挑戦でもある。

 豊島-藤井聡戦は、いま一番、将棋界で注目を集めるカードである。その理由のひとつが対戦成績で、王位戦第2局終了時点で豊島の7勝2敗。勝率8割超えの藤井に対し、これだけ差をつけて勝ち越している者はいない。両者とも早くからAIを取り入れ、鍛え上げられた強さは共通しているが、現時点では豊島が、戦術のうまさで貫録を見せている。この先、三冠、四冠が期待される藤井の快進撃を止められる最有力が豊島と言えよう。

ダブルタイトル戦

叡王戦は、持ち時間各4時間(チェスクロック使用)の一日制であり、二日制の王位戦とはまったく異なるため、作戦選びや時間配分にも違いが表れそうだ。

 これまでの両者の対戦は角換わりが最多。ただし、最近は公式戦で相掛かりや矢倉など、別の戦型を選ぶことも多く、五番勝負は毎局違った戦型になるかもしれない。
また、豊島は研究範囲であれば序盤を早指しで進めることが多く、藤井は駒がぶつかる中盤戦から惜しみなく時間を使う傾向にある。
序盤巧者の豊島に対し、藤井は正確無比な終盤力を誇るため、そうなれば当然、勝負の鍵を握るのは中盤戦のねじり合い。読みと大局観が盤上に出やすい場面で、いかに自分のペースに持っていけるかがポイントになる。

 ダブルタイトル戦の十二番勝負。さらに現在、藤井は竜王戦の決勝トーナメントも勝ち上がっており、十二番が十九番勝負に増える可能性がある。対局日程の過密は、両者ともに経験済みであり、それぞれ体調管理の面での落ち度はないだろう。

 二冠同士の頂上決戦。どちらかが三冠に前進するのか、それとも二冠のまま痛み分けになるのか。今期の叡王戦は第3局、第4局が両者の出身地・愛知県で開催される。それもまた大いに盛り上がりを見せそうだ。

 2021年の暑い夏は、ここからが本番である。

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