新連載スタート!夏の風物詩・YAMADA女流チャレンジ杯T準々決勝での「一石二鳥」の一手とは?【山口絵美菜女流1級の好局選】

www.shougi.jp

将棋研究

将棋研究 > 将棋ニュース > 新連載スタート!夏の風物詩・YAMADA女流チャレンジ杯T準々決勝での「一石二鳥」の一手とは?【山口絵美菜女流1級の好局選】

新連載スタート!夏の風物詩・YAMADA女流チャレンジ杯T準々決勝での「一石二鳥」の一手とは?【山口絵美菜女流1級の好局選】

日本将棋連盟ホームページコラムをご覧の皆様、いつもお読みいただきありがとうございます。これまでライターとして女流棋士のお仕事についての記事やイベントレポートを書いてまいりましたが、この度新たな企画を始めることになりました!普段なかなか見ることのできない女流棋戦の棋譜を山口の独断でピックアップ&初級の方向けにわかりやすく解説していくという新連載です!引き続きお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

さて、記念すべき第1回目は、夏の風物詩・YAMADA女流チャレンジ杯トーナメントより準々決勝の渡辺弥生女流初段―頼本奈菜女流初段戦をご紹介いたします。日本将棋連盟モバイルの中継でベスト4までの模様をご覧になった方も多いかと思いますが、本局は中継されていない将棋、なおかつ大一番ということでチョイスしました。

YAMADA女流チャレンジ杯は2015年に創設された棋戦で、今年で5期目を迎えます。6月15日に東京・将棋会館で対局が行われ、一日のうちにベスト4までが決まりました。

column-yamaguchi_201908_01.JPG
昨年(2018年)のYAMADAチャレンジ杯の準決勝、決勝戦の対局会場。高崎市のヤマダ電機LABI1 LIFE SELECT高崎で行われた。今年も第4回YAMADAチャレンジ杯、第5回YAMADA女流チャレンジ杯の準決勝、決勝戦が行われる。撮影:銀杏

第5回YAMADA女流チャレンジ杯 準々決勝 渡辺弥生女流初段VS頼本奈菜女流初段

準々決勝の本局。勝ち上がればベスト4となり、8月18日(日)に群馬県高崎市「LABI1 LIFE SELECT高崎」で行われる公開対局への進出が決まります。振り駒の結果、頼本女流初段が先手番となり三間飛車対居飛車の対抗形へ。

【第1図は▲9七角まで】

三間飛車対策はいろいろなものがありますが、本局は堅く囲わず、右辺(6~8筋)に重きを置く構え。

数手進んで第2図。

【第2図は△4二金上まで】

先手はゆっくりしていると飛車を押さえつけられてしまいそうな局面です。ここで頼本女流初段は強気な指し手で捌きに出ました。何を指したでしょう?すこし考えてみてください。

本譜はなんと▲7五角!銀の利きに角を飛び出す、なかなか指しにくい一手です。△7五同銀▲同飛と進めば角と銀の交換で後手の駒得ですが、先手は次に▲8五飛などの楽しみがあります。角を犠牲に飛車を捌く狙いです。駒が取れる状況になった時は、まずは「取る」手から考えるのがポイント。取ったらどうなるかを読み、形勢が悪くなるようなら、それから「取らない」手を考えましょう。実戦は角を「取らない」順へ。▲7五角以下△7四飛▲8四角△同飛▲7二飛成と進みました。

column-yamaguchi_201908_03.JPG
頼本奈菜女流初段(第9期リコー杯女流王座戦一次予選)撮影:常盤秀樹

互いに竜を作り第3図。金銀4枚が連携した堅陣の先手玉に対し、金一枚のみの薄い後手玉。ここで大事なのは「防御壁を死守する」こと。次に▲7一竜と入られては万事休す。後手は6三角・7二歩・7一桂で作った防御壁が生命線です。竜の侵入を防ぐためにどうすればいいでしょうか?

【第3図は▲8二竜まで】

本譜、渡辺女流初段は△4四角と上がり、角の利きで紐を付けました。これは7一に利かせつつ、自玉の懐を広げた「一石二鳥」の一手です。2つ以上の意味を持った指し手は好手なことが多いので、皆さんも手を決めるときにぜひ意識してみてください。

実戦は後手の2枚角が守り駒としての役目を果たしたのち、先手陣を切り崩す攻め駒に転身。最終盤は一手を争う速度勝負になりましたが、118手までで後手の渡辺女流初段の勝ちとなりました。

【投了図は△3七金まで】

column-yamaguchi_201908_02.JPG
渡辺弥生女流初段(第13期マイナビ女子オープン予選)撮影:常盤秀樹

YAMADA女流チャレンジ杯ベスト4に残ったのは渡辺女流初段、伊奈川愛菓女流初段、山根ことみ女流初段、脇田菜々子女流1級。準決勝、そして決勝戦は8月18日(日)に群馬県高崎市にて行われます。ぜひご注目ください!

これからも女流棋戦を紹介してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

次の記事:新四段誕生のお知らせ

前の記事:第60期王位戦七番勝負第5局大盤解説会のご案内

ニュースTOP