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ー第35期女流王位戦五番勝負展望ー

加藤桃子女流四段が挑戦者に

3月15日、東京・将棋会館の「特別対局室」で第35期女流王位戦挑戦者決定戦が行われた。
紅組優勝したのは前期挑戦者の伊藤沙恵女流四段。リーグでは千葉涼子女流四段〇、大島綾華女流二段●、山根ことみ女流三段〇、西山朋佳女流三冠〇、中井広恵女流六段〇の4勝1敗。伊藤女流四段が強いのはいつものことで、今期紅組で注目を集めたのはリーグ初参加の大島女流二段だろう。最終局西山朋佳女流三冠に敗れて惜しくも優勝は逃したものの最終成績は同じく4勝1敗(大島女流二段は予選から勝ち上がってリーグ入りしており、前期の成績を優先するルールのためもともとリーグにいた伊藤がリーグ優勝)。ちなみに大島はこのあと第17期マイナビ女子オープンで挑戦者となり、現在西山朋佳女王(女流三冠)と五番勝負を戦っている。
白組優勝したのは加藤桃子女流四段。リーグでは香川愛生女流四段、渡部愛女流三段、小髙佐季子女流初段、松下舞琳女流初段、野原未蘭女流初段に勝ち、5連勝でリーグ優勝。
図は伊藤と加藤の挑戦者決定戦の中盤戦。後手の伊藤が▲3三歩成に△同玉と応じたところ。玉さばきが得意な伊藤らしい応手だ。鋭い攻め将棋の加藤の次の一手はもちろん...

【第1図は△3三同玉まで】

第1図からの指し手
▲2五飛△同歩▲1五角△4四玉▲3七角

ここで飛車を切ったのが好手。▲1五角が王手銀取りだ。△2四桂と合い駒をするのは▲3五銀がある。伊藤はさらに△4四玉と中段へ逃げて頑張ったが、▲3七角と成銀を取った手がまた▲5五銀の先手になっている。このあとも熱戦が続いたが、最後は伊藤の攻めを的確に余した加藤が勝利。女流王位への挑戦権を獲得した。

加藤桃子女流四段
写真:生姜

女流棋界を双肩に担うふたり

加藤を迎えうつのはご存知、福間香奈女流王位。ちょうどデビューしてから今年で20年目。相変わらずの強さで、現在女流王位のほか清麗、女流王座、女流名人、倉敷藤花を保持。女流王位は9期獲得しており、5連覇中。クイーン王位の資格保持者だ。この冬に岡田美術館杯第50期女流名人戦五番勝負で西山朋佳女流名人から女流名人を奪取。これで女流タイトルの獲得数はなんと57期になった。女流王位以外は白玲1期、清麗4期、女王1期、女流王座7期、女流名人13期、女流王将8期、倉敷藤花14期。ひょっとしたら本人も言い間違えるんじゃないかと思うくらい、どんどん記録を伸ばしている。
中飛車を得意とする振り飛車党で、特に終盤で詰みを読む速さは桁違い。まさに「出雲のイナズマ」の異名の通りである。
挑戦者の加藤は清麗1期、女王4期、女流王座4期の合計9期女流タイトルを獲得。タイトル1期を獲るのでも大変なのだから、もちろんこれもすごい記録。昨年の7月、将棋のために環境を変えたいと、関西に移籍した。それからリコー杯第13期女流王座戦五番勝負と、今回の第35期女流王位戦五番勝負の挑戦者になっており、さっそく結果が出ている印象だ。
序中盤の研究と踏み込みの良い攻めが武器の正統派居飛車党である。

福間香奈女流王位
写真:武蔵

13回目のタイトル戦

福間と加藤は今回が13回目のタイトル戦。これまでは福間が10勝、加藤が2勝。女流王位戦五番勝負では2020年の第31期で里見女流王位に加藤が挑戦しており、3連勝で福間がタイトルを防衛した。図はその第31期女流王位戦五番勝負第3局の終盤戦で、後手の加藤が角取りに51の飛車を△5四飛と浮いたところ。次の一手を見たときは思わず「なるほど、そうか」とため息が出た。

【第2図は△5四飛まで】

第2図以下の指し手
▲1五歩△4四飛▲1四歩△1六歩▲1三歩成△同桂▲1四香

角取りに構わず▲1五歩が厳しい。ずっと穴熊と戦ってきた、福間の技が光っている。このあとも激戦が続いたが、最後は福間が後手玉を即詰みに討ち取り、女流王位のタイトルを防衛した。

戦型は福間の中飛車に加藤が急戦や左美濃、穴熊で対抗する居飛車対振り飛車の対抗型が圧倒的に多い。ふたりとも序中盤の研究が深く、終盤が鋭い。少し対戦成績は開いているものの、いつも最後まで大熱戦で、加藤にも十分勝機はある。現在福間と同じ関西で腕を磨いている加藤の戦いぶりに期待していただきたい。女流棋界最高峰の居飛車対振り飛車の戦いにぜひご注目ください。

第35期女流王位戦五番勝負は4月25日(木)、徳島県板野郡「樫野倶楽部樫野邸」にて開幕する。

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