将棋研究

平目

平目(ひらめ)は、中飛車から左金を5九へ寄せ、金銀を低く配置して角交換や大駒の打ち込みに備える振り飛車戦法です。5九・4九付近に並ぶ金が魚のヒラメを思わせることから「平目」と呼ばれます。

中飛車ページでは中飛車全体、ゴキゲン中飛車では攻撃型、ツノ銀中飛車では二枚銀の厚み、風車では飛車の転回と待機を扱っています。このページでは、平目固有の5九金型、低い陣形、角交換への強さ、左銀のさばき、平目囲いとしての特徴に絞って解説します。

「平目戦法」と「平目囲い」は同じ基本形を指して使われることが多いため、このページでまとめて扱います。

平目戦法の特徴

戦法のタイプ振り飛車・中飛車派生/低陣・バランス型
攻撃性★★
仕掛けの早さ★★
覚えやすさ★★★
定跡量★★
汎用性★★

※評価は当サイト独自の目安です。

平目はこんな人におすすめ

平目戦法とは

 987654321  
          一▲
          二先手
          三 
          四 
          五 
 歩 歩 歩   歩六 
  歩角歩 歩歩歩 七 
後手   銀飛車 銀玉 八 
▽香車桂馬  金金 桂馬香車九 

平目戦法・平目囲いの基本形

平目は、飛車を5八へ振ったあと、左金を5九、右金を4九付近に置き、玉を2八、右銀を3八、左銀を6八付近へ配置する低い陣形が代表的です。

一般的な美濃囲いでは玉の周囲へ金銀を寄せますが、平目では金銀を低い位置へ横に並べ、陣形全体で大駒の侵入を受け止めます。

この低さが平目の最大の特徴です。自陣に空いたマスが少なく、角交換後に相手の角を打ち込まれる場所を限定しやすいため、中飛車で角交換が起きる展開にも対応しやすくなります。

「平目戦法」と「平目囲い」の違い

平目は戦法名としても、陣形・囲いの名前としても使われます。

呼び方主に指す内容
平目戦法中飛車から平目の陣形へ組み、受けと反撃を狙う戦い方全体
平目囲い5九・4九付近の金を中心に、低く横へ広がった守備陣形

実戦では両者を厳密に分けず「平目」と呼ぶことも多いため、このページでは戦法と囲いを一体として解説します。

中飛車・ゴキゲン中飛車・ツノ銀中飛車・風車との違い

戦法主な役割・特徴
中飛車飛車を5筋へ振る戦法全体。種類・基本・囲い・対策を横断して解説
ゴキゲン中飛車角道を開け、5筋の位を取って自分から攻める攻撃型
ツノ銀中飛車二枚銀で中央を厚くし、急戦を受け止めるバランス型
風車低い飛車を左右へ転回し、待機とカウンターを狙う流動型
平目左金を5九へ使い、金銀を低く配置して打ち込みに備える低陣型

平目と風車はどちらも低い陣形を使いますが、風車の中心は飛車の横転回、平目の中心は5九金を含む低い守備陣形です。

左金を5九へ寄る狙い

角の打ち込み場所を減らす

中飛車では飛車が5八にいるため、左金を通常どおり5八へ上げることができません。平目では左金を5九へ寄せ、右金と低い位置で連結させます。

金が低い位置に残ることで、自陣の空間を埋め、角交換後の両取りや飛車取りにつながる角打ちを受けにくくします。

左右の守りをつなぐ

5九の金は中央に近いため、左辺だけでなく玉側の守りにも参加できます。

平目では一か所を極端に堅くするのではなく、金銀の利きを重ねて陣形全体の隙を少なくする考え方が重要です。

角交換に強いと言われる理由

平目は陣形が低く、金銀が自陣の空いたマスを埋めているため、一般的な振り飛車より角の打ち込み場所を作りにくいのが長所です。

そのため「角交換に強い」と説明されることがあります。ただし、角交換そのものが常に平目側に有利という意味ではありません。

飛車・金・銀の位置によっては両取りの角打ちが生じることもあるため、交換後に相手がどこへ角を打てるかを確認してから進める必要があります。

左銀をさばくのが重要

平目では左金を5九へ置くぶん、左銀をどう働かせるかが攻撃面の重要なテーマになります。

左銀を中央や左辺へ進出させて交換できれば、守備陣を崩しすぎずに持ち駒の銀を得られます。逆に左銀が自陣へ残ったままだと、守備駒が多いだけで攻め手が不足しやすくなります。

平目は「低く囲って待つだけ」の戦法ではなく、守備陣を維持しながら左銀や飛車をどこでさばくかが勝負になります。

平目の基本的な戦い方

相手の飛車先を受けてカウンターを狙う

平目は低い陣形で相手の大駒の侵入に備え、居飛車側が飛車先から動いてきたところを受けて反撃する展開と相性があります。

飛車先を突破されること自体をすべて防ぐのではなく、相手の飛車が前へ出たあとに角・銀・飛車を使って反撃できる形を作ります。

飛車を別の筋へ転回する

中飛車のまま5筋だけで戦う必要はありません。中央が厚く受けられた場合は、飛車を別の筋へ移して相手陣の薄い場所を狙うこともできます。

この点は風車と似ていますが、平目では飛車の転回そのものより、低い守備陣を崩さずに反撃することが中心です。

美濃囲いとの違い

比較平目美濃囲い
陣形低く横に広い玉側へ金銀を寄せる
重視するもの打ち込みへの強さ・バランス横からの攻めへの堅さ
角交換打ち込み場所を減らしやすい陣形によって角打ちの隙が生じる
攻撃左銀・飛車のさばきが重要囲いと攻撃陣を分けやすい

美濃囲いは振り飛車の基本的な囲いで、初心者にも組みやすい形です。平目は美濃囲いより特殊で、堅さの一点ではなく盤面全体のバランスを重視します。

平目のメリット

低い陣形で大駒の打ち込みに備えやすい

金銀を低く配置することで自陣の空間が減り、角や飛車を打たれたときの両取りを受けにくくできます。

金銀4枚を連携させやすい

守備駒を一方へ寄せすぎないため、中央・左右のどこで戦いが起きても複数の金銀を働かせやすいのが特徴です。

相手の研究を外しやすい

現在の中飛車ではゴキゲン中飛車や先手中飛車の主要定跡が中心なので、平目に組むと相手を通常の中飛車定跡から外しやすい面があります。

平目のデメリット・注意点

玉そのものは深く囲えていない

平目は金銀4枚が連携しますが、穴熊のように玉を戦場から遠ざける囲いではありません。

大駒が自陣へ侵入したあと王手が続く形になると、金銀の枚数ほど安全ではない場合があります。

攻めの目標が分かりにくい

ゴキゲン中飛車の5筋攻めのような明確な仕掛けが少なく、相手の形を見て左銀や飛車をどこへ使うか判断する必要があります。

現在は専門的な定跡資料が少ない

平目は現代プロ棋戦の主流戦法ではないため、ゴキゲン中飛車などに比べて新しい専門書や定跡資料は多くありません。

その分、基本形の意味を理解し、実戦で相手の形に合わせて指す力が求められます。

平目は現在でも使える?

現在でも使うことはできますが、プロ棋戦の主流戦法ではありません。

一方で、5九金という低い金の配置自体は現代の中飛車研究でも現れることがあります。2026年刊の中飛車棋書でも「ヒラメ流!? 研究手の▲5九金左」というテーマが取り上げられており、低い金配置という発想そのものは現代将棋にもつながっています。

ただし、その研究手と古典的な平目戦法を完全に同じものとして扱うのは適切ではありません。平目の基本思想を現代的な形にも応用できる、と捉えるのがよいでしょう。

平目は初心者におすすめ?

中飛車を初めて覚える初心者には、やや専門的な戦法です。

基本形そのものは覚えやすい一方、「どこから攻めるか」「左銀をいつさばくか」「角交換後にどの打ち込みを警戒するか」といった局面判断が重要だからです。

まず中飛車と美濃囲いの基本を覚えたあと、次の3点から試すと理解しやすくなります。

  1. 左金を5九へ寄せて低い陣形を作る
  2. 角交換後の相手の角打ちを確認する
  3. 左銀を自陣に残しすぎず、交換・進出の機会を探す

居飛車側の平目対策

低い陣形へ無理に大駒を打ち込まない

平目は角・飛車の打ち込みに備えた陣形なので、交換した大駒をすぐ自陣へ打ち込んでも有効な両取りがない場合があります。

居飛車側は持ち角を急いで使わず、平目側の金銀が動いて隙が生じるまで待つことも重要です。

玉頭や端から攻める

平目は低い位置の打ち込みには強い一方、玉を穴熊のように深く囲っているわけではありません。

玉の近くへ歩・銀・桂馬を集め、上から攻めると低い金銀を守備だけに使わせやすくなります。

左銀をさばかせない

平目側の左銀が前線で交換できると、守備陣を維持したまま攻撃用の持ち駒を得られます。

居飛車側は銀の進出地点を歩や金銀で押さえ、平目側の攻撃駒を自陣に残すことを狙います。

平目についてよくある質問

平目は戦法ですか?囲いですか?

両方の意味で使われます。中飛車から平目の陣形へ組んで戦う全体を「平目戦法」、5九・4九付近の金を中心に低く構えた形を「平目囲い」と呼ぶことがあります。

平目と風車の違いは?

風車は飛車を下段へ引き、左右へ転回して待機・反撃するのが中心です。平目は左金を5九へ寄せた低い守備陣形が中心で、飛車の横転回は必須ではありません。

平目は角交換に強いですか?

低い陣形なので角の打ち込み場所を限定しやすいのは長所です。ただし角交換なら必ず有利になるわけではなく、飛車・金銀の配置次第では両取りを受けるため注意が必要です。

平目は香落ちでも使われますか?

平目は古くから香落ち上手の構想としても知られています。平手では中飛車の一派として使われ、低い金銀配置と角交換への備えが共通する特徴です。

→ 中飛車全体の基本・種類を見る

まとめ

平目は、中飛車から左金を5九へ寄せ、金銀を低く配置して大駒の打ち込みに備えるバランス型の振り飛車戦法です。

平目をさらに学ぶには

平目を直接扱う棋書は多くありませんが、石田和雄九段の『中飛車を破れ・下巻』では「平目戦法」が独立した章として扱われています。古い棋書のため現在の主要定跡とは異なりますが、平目の基本的な攻防を確認する資料になります。

現在の中飛車全体を学ぶ場合は、平目だけに絞らず中飛車やゴキゲン中飛車もあわせて確認すると、戦法の位置づけが分かりやすくなります。

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