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後手番一手損角換わり

概要

後手番一手損角換わり(かくがわり)は戦法の一つで、角換わりの一種。一般的に省略して一手損角換わりとも呼ばれる。

角換わりの序盤において、後手が△8五歩を省略するために早期に角交換する。そのために後手の上にさらに一手損するという、従来は考え得なかった戦法。具体的には△8五歩の一手を損したことにより、8五の歩が8四に下がっているかたちになるため、8五に桂馬を跳ねる余地がある(これは攻めの意味もあれば、7三の桂頭を敵に狙われにくくする意味もある)など、作戦の幅が拡がる。これがこの戦法の骨子である。

従来の角換わりには腰掛け銀棒銀早繰り銀の3戦法がある。以下ではそれぞれの戦法の一手損角換わりにおける展開を記す。

英語名称はTempo Loss Bishop Exchange。

腰掛銀

  9 8 7 6 5 4 3 2 1    
  香車     金 玉     桂馬 香車 先手
    飛車         金    
      桂馬   歩   銀 歩   角
  歩 歩 歩 歩 銀 歩 歩   歩  
                歩    
  歩   歩   銀 歩 歩      
角   歩 銀 歩 歩   桂馬   歩  
後手     金   金     飛車    
香車 桂馬 玉           香車  

腰掛け銀 △7三桂まで

角換わり腰掛け銀とほぼ同様。ただし、いわゆる角換わり腰掛け銀同型になったとき、後手の飛車先の歩が8五でなく8四にあるため、△8五桂からの反撃が可能になるなど指し手の幅が広がり、研究の幅が広がった。従来の△8五歩型と比較して、同型腰掛け銀においても純粋に後手得というわけではないが、手が広がっているため、先手に一方的に主導権を握られる展開を避けやすい。

棒銀

  9 8 7 6 5 4 3 2 1    
  香車 桂馬   金 玉     桂馬 香車 先手
    飛車         金    
  歩   歩 銀 歩 歩 銀 歩 歩 角
    歩   歩     歩      
                歩    
  歩   歩         銀 歩  
角   歩 銀 歩 歩 歩 歩      
後手     金         飛車    
香車 桂馬     玉 金   桂馬 香車  

棒銀 △6三銀まで

先手側からすれば、後手の手損を直接的に咎めるため、早い展開に持ち込もうと考える。腰掛け銀に比べ早く戦いを起こせる棒銀で挑めば、手損している後手は当然不利になるのではないか、と考えられた。しかし先手棒銀は従来の角換わり型で勝率が芳しくなかったため、一手損でもある程度後手やれると考える人が多く、有力ではあるものの明快な対策にはならないようである。また先手棒銀の展開の場合、一手損したが故に△8四歩の形であるため、1筋での銀香交換のあと、▲6六角から▲8四香という攻めの筋を消しているのも一手損の効果の一つである。

早繰り銀

  9 8 7 6 5 4 3 2 1    
  香車 桂馬   金 玉     桂馬 香車 先手
    飛車         金    
  歩   歩   歩 歩 銀 歩 歩 角
        歩 銀   歩      
    歩           歩    
  歩   歩     銀 歩      
角   歩 銀 歩 歩 歩     歩  
後手     金 玉       飛車    
香車 桂馬       金   桂馬 香車  

早繰り銀 △5四銀まで

やはり後手の手損を咎めるために早繰り銀も有力であり、当初はこの早繰り銀を避けるため、後手は1筋の端歩を打診された時に受けずに駒組みを進める手が多かった。ただその場合先手が▲1五歩と端を突き越せるため、▲1五歩型先手右玉という手段が有力になった。

現在はあえて早繰り銀を避けずに、後手が△8五歩と今度は手損したはずの歩をあえて伸ばし、早繰り銀に対して相性のいい腰掛け銀で対応する手法などがあり、明快に先手良しとするまでには至っていない。