将棋研究

嬉野流

嬉野流は、初手▲6八銀という珍しい出だしから、角を引いて左銀と組み合わせ、主に2筋・3筋方面の攻撃を狙う戦法。

一般的な居飛車のように最初から飛車先の歩を伸ばすのではなく、相手の作戦が決まる前に独自の形へ誘導しやすい。居飛車と振り飛車のどちらにも使える一方、自玉を堅く囲うより攻めの速度や柔軟な受けを重視するため、狙いを知らずに駒だけ並べても指しこなすのは難しい。

この記事では、嬉野流の基本的な駒組み、従来型と新嬉野流の違い、長所と弱点、嬉野流を相手にしたときの対策まで解説する。

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 香車桂馬 金玉金銀桂馬香車一▲
  飛車 銀   角 二先手
 歩 歩歩歩歩 歩歩三 
       歩  四 
  歩       五 
     歩    六 
 歩歩歩歩銀歩歩歩歩七 
後手  金    飛車 八 
▽香車桂馬角 玉金銀桂馬香車九 

嬉野流の基本的な駒組みの一例(▲7九角まで)

嬉野流の特徴

項目評価
戦法のタイプ奇襲・速攻型
攻撃性★★★★
仕掛けの早さ★★★★
覚えやすさ★★★
定跡量★★
汎用性★★★★★

※評価は当サイト独自の目安。

嬉野流はこんな人におすすめ

嬉野流とは

嬉野流は、初手▲6八銀から始めるのが大きな特徴。従来型では早い段階で▲7九角と引き、▲5六歩から左銀を▲5七銀へ進める。

角を7九へ引くと、角は2筋方向を見通しやすくなる。そこへ左銀を中央から前線へ進め、角と銀を協力させて相手陣を攻めるのが基本的な考え方となる。

ただし、嬉野流は一つの完成形だけを目指す戦法ではない。相手が居飛車か振り飛車か、飛車先を急いで伸ばしてくるかによって、角を引く時期、銀の位置、玉の移動先が変わる。

嬉野流の基本的な駒組みと指し方

初手▲6八銀から左銀を使う

嬉野流では、通常は7九にいる左銀を初手から6八へ動かす。その後に▲5六歩、▲5七銀と進めることで、左銀を攻撃へ参加させる準備をする。

初手▲6八銀は飛車先も角道も開けないため、一見すると目的が分かりにくい。しかし、相手に作戦を絞らせにくいまま、角と銀を使う独自の攻撃形を目指せる点に意味がある。

角を引いて2筋を狙う

従来型の嬉野流では、角を▲7九角と引く。7九の角は斜めに長く利き、将来の▲2六歩から▲2五歩、左銀の進出と組み合わせて2筋・3筋へ圧力をかける。

攻めるときは銀だけを前へ出すのではなく、角、銀、歩、飛車が働く形を作ることが重要。相手が受けを固めた場合は、同じ筋を無理に攻め続けず、中央や反対側へ方針を変える必要もある。

玉は堅く囲いすぎない

嬉野流は攻撃形を急いで作るため、自玉の囲いに多くの手数をかけにくい。右玉に近い形へ移動する場合や、中住まいに近い位置で戦う場合もあり、毎局同じ囲いになるとは限らない。

玉をまったく動かさなくてよいという意味ではない。相手の飛車や角の攻撃線から玉を外し、反撃を受けたときに逃げ道を確保する意識が必要となる。

嬉野流の基本的な狙い

引き角と銀で2筋・3筋を攻める

嬉野流の分かりやすい狙いは、引き角と左銀を主役にした速攻。角の利きで相手の守備駒をにらみながら銀を前へ進め、歩交換や駒交換をきっかけに飛車を働かせる。

形だけを見ると斜め棒銀に似ているが、嬉野流では初手▲6八銀から独自の手順でその攻撃形を作る点に特徴がある。

相手を慣れない形へ誘導する

初手から定跡形を外れやすく、相手が普段の戦法へ組みにくいことも嬉野流の狙いの一つ。特に短い持ち時間の将棋では、序盤から判断を求められる形へ誘導しやすい。

ただし、珍しい形であることだけに頼ると、相手が対策を知っていた場合に攻めが止まりやすい。奇襲性は利点だが、それを支える攻め筋と受け方の理解が必要となる。

従来型と新嬉野流の違い

従来型は早い▲7九角

従来型は、▲6八銀△3四歩▲7九角のように、早い段階で角を引く。狙いが明快で、自分の得意形を作りやすい反面、相手にも方針を読まれやすい。

相手が8筋の歩を急いで伸ばすと、先手は飛車先の受け方を選ばなければならない。場合によっては▲8八歩と自陣へ歩を打ち、相手の棒銀を遅らせる独特の受けも現れる。

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 香車桂馬銀金玉金銀桂馬香車一▲
  飛車     角 二先手
 歩歩歩歩歩歩 歩歩三 
       歩  四 
          五 
          六 
 歩歩歩歩歩歩歩歩歩七 
後手   銀   飛車 八 
▽香車桂馬角金玉金銀桂馬香車九 

従来型の嬉野流は早い段階で▲7九角と引く

新嬉野流は角を引く時期を遅らせる

新嬉野流と呼ばれる指し方では、▲6八銀△3四歩にすぐ▲7九角とせず、▲5六歩などを先に指す。

角を8八に残すことで、状況に応じて▲7六歩と角道を開ける、あとから▲7九角と引く、端へ角を出すといった選択肢を残せる。従来型より柔軟だが、相手の手を見て方針を選ぶ判断力が求められる。

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 香車桂馬銀金玉金銀桂馬香車一▲
  飛車     角 二先手
 歩歩歩歩歩歩 歩歩三 
       歩  四 
          五 
     歩    六 
 歩歩歩歩 歩歩歩歩七 
後手 角 銀   飛車 八 
▽香車桂馬 金玉金銀桂馬香車九 

新嬉野流の出だしの一例(▲5六歩まで)

比較従来型新嬉野流
序盤早めに▲7九角▲5六歩などを先に指す
長所狙いが分かりやすく形を作りやすい角の使い方を保留できる
注意点相手に狙いを読まれやすい状況判断が難しい
向いている人まず基本形を覚えたい人相手に応じて変化したい人

相手が居飛車の場合の指し方

相手が居飛車の場合は、引き角と左銀を使い、主に2筋・3筋の攻略を目指す。▲2六歩から▲2五歩と飛車先を伸ばし、銀を前線へ運んで角と協力させるのが基本となる。

一方、相手が△8四歩から△8五歩と急いで飛車先を伸ばす場合は、自分の攻めだけを進めると8筋を突破されるおそれがある。▲7八金で受ける、必要に応じて歩を打って速度を落とすなど、相手の速攻への対応を優先する。

嬉野流は「相手を見ずに同じ駒組みを完成させる戦法」ではない。相手が急戦なら受けを一手入れ、相手がゆっくりなら攻撃形を進めるという手順の調整が重要となる。

相手が振り飛車の場合の指し方

相手が振り飛車の場合も、角と左銀を前線で働かせる方針は変わらない。形によっては鳥刺しに似た構えとなり、角と銀で振り飛車側の囲いへ圧力をかける。

ただし、四間飛車、中飛車、三間飛車では相手の飛車の位置と反撃の筋が異なる。すべてに同じ仕掛けを使うのではなく、相手の飛車がいる筋、自玉の安全、角交換後の打ち込みに注意して攻める。

相手が振り飛車にしたからといって、必ず居飛車のまま戦う必要もない。局面によっては自分も向かい飛車へ振る構想があるため、嬉野流を居飛車だけの戦法と決めつけないことが大切。

嬉野流のメリット

自分の得意形へ誘導しやすい

初手▲6八銀から始めるため、矢倉や角換わりなどの一般的な定跡から早い段階で離れやすい。覚えた形へ誘導しやすく、相手にも序盤から考えさせることができる。

居飛車と振り飛車の両方に使える

相手の飛車の位置が決まる前から駒組みを始められ、居飛車にも振り飛車にも対応する構想がある。一つの戦法を軸に、さまざまな相手と戦いたい人には魅力となる。

攻めの方針が明快

引き角と銀を協力させ、2筋・3筋へ圧力をかけるという中心的な狙いがある。角と銀の連携、歩交換、攻めの速度を学びやすい。

嬉野流の弱点・注意点

自玉が薄くなりやすい

攻撃形を優先するため、玉を堅く囲えないまま戦いが始まることがある。攻めが止まると反撃が自玉へ届きやすく、単純な攻め合いが常に有利になるわけではない。

相手の速攻に対応する必要がある

相手が飛車先を早く伸ばすと、自分の攻撃準備だけを続ける余裕がない。8筋を受ける金の位置や、歩交換後の飛車の侵入を防ぐ方法を知っておく必要がある。

攻めが単調になると受け止められやすい

角と銀の狙いが分かりやすい一方、攻撃する場所も相手に伝わりやすい。相手が十分な守備駒を集めた場所へ、駒損をしながら突進し続けるのは危険。

定跡を外れてからの判断が難しい

序盤を自分の形へ誘導できても、中盤は力戦になりやすい。相手の作戦ごとに角の位置、銀の進路、玉の逃げ道を判断する必要があるため、「初手だけ覚えれば指せる戦法」ではない。

嬉野流への対策

嬉野流への対策で重要なのは、珍しい初手に驚いて無理に咎めようとしないこと。嬉野流は▲7九角と左銀を使って2筋・3筋を攻めるのが代表的な狙いなので、まず角と銀の位置を確認する。

角と銀の攻撃目標を確認する

嬉野流側の銀が前へ出てきたら、銀単体ではなく、その後ろの角や飛車がどこへ利いているかを見る。攻められている地点に守備駒を足し、歩交換のあとに飛車を侵入させない形を作る。

守る場所を増やしすぎると別の筋が薄くなるため、相手の銀がまだ進出していない段階で決めつけないことも大切。

居飛車では飛車先を使って主導権を取る

居飛車側は、△8四歩から△8五歩と飛車先を伸ばし、嬉野流側に受けの手を使わせる方針が分かりやすい。角を早く引いた形は8筋の受け方に工夫が必要となるため、自分の攻撃準備を進めながら相手の形を限定しやすい。

ただし、飛車先の歩を交換すれば自動的に有利になるわけではない。▲8八歩や金・銀の組み替えで受けられる変化もあるため、飛車を深く入りすぎて捕まらないよう注意する。

中央と自玉を整えてから反撃する

嬉野流は速い攻めを狙うため、受ける側が焦って仕掛けると相手の得意な攻め合いになりやすい。角銀の攻撃を受け止められる形を作り、自玉の安全を確保してから中央や薄い場所を反撃する。

嬉野流側の玉は堅く囲われていないことが多い。攻めを一度受け止めれば、中央からの反撃や角交換後の打ち込みが厳しくなる場合がある。

振り飛車では鳥刺し型の攻めを警戒する

振り飛車を選ぶ場合は、嬉野流側が角と左銀を使って鳥刺しに似た攻撃形を作る可能性を考える。囲いを完成させることだけを優先せず、銀の進出を受け止める駒組みと反撃のタイミングを用意する。

四間飛車、中飛車、三間飛車では対応が変わるため、飛車の位置に応じた通常の対急戦の考え方も併用する。

避けたい対応

嬉野流には複数の組み方があり、従来型と新嬉野流でも角の使い方が異なる。対策は一つの決め手を暗記するより、角と銀の狙い、飛車先の速度、自玉の安全を毎局確認する方が実戦的。

嬉野流は初心者におすすめ?

嬉野流は、攻めの狙いが見えやすく、自分の得意形を作りやすいという点では初心者にも魅力がある。定跡量を抑えながら、引き角と銀の連携を学びたい人にも試しやすい。

一方で、自玉が薄い状態で戦うことが多く、相手の作戦に応じた受けや方針転換が必要となる。初手▲6八銀と基本の駒組みだけを覚えて、毎局同じ順番で駒を動かす指し方では勝ちにくい。

初心者が覚える場合は、次の順番がおすすめ。

  1. 初手▲6八銀からの基本形を覚える
  2. ▲7九角と▲5七銀の役割を理解する
  3. 相手の飛車先が速い場合の受け方を覚える
  4. 攻める前に自玉への反撃を確認する
  5. 従来型に慣れてから新嬉野流の選択肢を学ぶ

嬉野流についてよくある質問

嬉野流は奇襲戦法ですか?

初手▲6八銀という珍しい出だしで相手を定跡形から外しやすいため、奇襲戦法として紹介されることが多い。ただし、意外性だけで勝つ戦法ではなく、引き角と銀を使った具体的な攻撃や受けの構想がある。

嬉野流は先手と後手のどちらでも使えますか?

基本は先手の▲6八銀から説明されることが多いが、後手でも左右を反転した考え方を使える。ただし、後手は相手に一手先に指されているため、同じ手順をそのまま再現できるとは限らない。相手の仕掛けに合わせた手順調整が必要。

嬉野流と鳥刺しは同じ戦法ですか?

同じではない。嬉野流は初手▲6八銀を中心とした出だしと構想を指し、相手が振り飛車の場合などに鳥刺しに似た攻撃形へ合流することがある。

嬉野流にはどのような囲いが合いますか?

毎局同じ囲いを完成させるより、相手の攻撃線から玉を外すことを優先する。右玉や中住まいに近い形になる場合があるが、局面によって玉の位置は変わる。

嬉野流に必勝の対策はありますか?

一手で戦法全体を否定するような必勝策として覚えるべきものはない。角と銀の攻撃を確認し、飛車先で先手を取り、自玉を整えてから反撃することが基本となる。相手が従来型か新嬉野流かによっても対応を変える必要がある。

まとめ

嬉野流は、初手▲6八銀から角と左銀を活用し、2筋・3筋を中心に速攻を狙う戦法。

従来型では早めに▲7九角と引き、新嬉野流では角を引く時期を遅らせて選択肢を残す。相手を慣れない形へ誘導しやすく、居飛車と振り飛車の両方に使える一方、自玉が薄くなりやすく、相手の速攻に応じた受けが必要となる。

嬉野流を指す側は、角と銀の連携だけでなく、相手の飛車先と自玉の安全を確認する。対策する側は、珍しい形を無理に咎めようとせず、攻めを受け止めてから薄い玉へ反撃することが重要。

まずは基本形と狙いを覚え、実戦では相手の作戦に合わせて角・銀・玉の位置を調整していこう。

→ 将棋の戦法一覧

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嬉野流をこれから覚えたい人や、基本の狙いから対居飛車・対振り飛車まで一通り学びたい人におすすめです。

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