将棋研究

陽動振り飛車

陽動振り飛車は、序盤では居飛車を指すように見せ、相手の駒組みを確認してから飛車を振る戦法です。

最初から四間飛車や三間飛車を明示するのではなく、相居飛車の含みを残したまま駒組みを進めることで、相手に対振り飛車とは異なる陣形を選ばせる狙いがあります。

特に古くから知られるのが、矢倉戦の出だしから後手が途中で振り飛車へ転じる形です。このページでは、陽動振り飛車の狙い、飛車を振るタイミング、メリット・弱点、対策まで初心者向けに解説します。

 987654321  
 香車桂馬銀金玉金銀桂馬香車一▲
      飛車 角 二先手
 歩 歩歩   歩歩三 
  歩  歩歩歩  四 
          五 
   歩歩歩    六 
 歩歩   歩歩歩歩七 
後手 角金銀   飛車 八 
▽香車桂馬  玉金銀桂馬香車九 

△8四歩と居飛車を含ませたあと、△4二飛と四間飛車へ転じた陽動振り飛車のイメージ

陽動振り飛車の特徴

戦法のタイプ振り飛車・陽動/力戦型
攻撃性★★★
仕掛けの早さ★★
覚えやすさ★★
定跡量★★
汎用性★★

※評価は当サイト独自の目安です。

陽動振り飛車はこんな人におすすめ

陽動振り飛車とは

陽動振り飛車は、広い意味では相居飛車のような出だしから途中で振り飛車へ転じる作戦の総称です。

狭い意味では、矢倉戦法の出だしから、主に後手が途中で飛車を振る形を指します。相手に矢倉囲いなど相居飛車向けの陣形を作らせたあと、横から攻める振り飛車へ切り替えるのが代表的な狙いです。

ただし、単に飛車を後から振れば成功という戦法ではありません。陽動する側も居飛車の含みを残すために手数を使うので、通常の振り飛車より駒組みに制約が生じます。

陽動振り飛車の基本的な狙い

相手の囲いを見てから飛車を振る

最初から振り飛車を明示すると、相手は舟囲い、左美濃、居飛車穴熊など対振り飛車向けの駒組みを選べます。

陽動振り飛車では、相手が相居飛車を想定した形へ進んだのを確認してから飛車を振り、駒組みのミスマッチを狙います。

相手の予定を外す

序盤で居飛車の含みを持たせると、相手は矢倉・雁木・角換わりなど複数の可能性を考える必要があります。

そこから振り飛車へ変化することで、相手が用意していた定跡形を外し、力戦へ持ち込みやすくなります。

飛車を振る場所を選べる

陽動振り飛車は「必ず四間飛車にする」という戦法ではありません。

相手の金銀や飛車先の位置を見て、四間飛車、三間飛車、向かい飛車などへ転じる余地があります。

矢倉模様からの陽動振り飛車

陽動振り飛車の代表例は、相矢倉を思わせる出だしから後手が飛車を振る形です。

矢倉囲いは相居飛車戦で使われる代表的な囲いですが、相手が横から攻める振り飛車へ変化すると、当初想定していた戦い方とは異なる対応が必要になります。

マイナビ出版の矢倉解説書でも「陽動振り飛車には急戦を仕掛けろ」という項目が設けられており、矢倉側が意識すべき変化の一つとして扱われています。

四間飛車・三間飛車・向かい飛車への転換

四間飛車へ転じる

四間飛車は、陽動後の候補として分かりやすい形です。飛車を4筋へ振り、相手の中央・左辺の配置を見ながら駒組みを進めます。

三間飛車へ転じる

三間飛車へ転じると、左辺の歩・角・桂馬を使った攻めを作りやすくなります。

向かい飛車へ転じる

相手が飛車先の歩を伸ばしている場合は、向かい飛車へ回って飛車先を直接狙う構想もあります。

どの筋へ振るかは固定せず、相手の陣形と自分の駒の配置を見て決めるのが陽動振り飛車らしい考え方です。

陽動振り飛車のメリット

相手の対振り飛車対策を外しやすい

相手が最初から振り飛車だと分かっていれば、対振り飛車用の囲いや仕掛けを選べます。

陽動振り飛車では戦型を後から変えるため、相手が準備していた形を外しやすくなります。

力戦へ持ち込みやすい

通常の定跡形から外れやすいため、序盤から互いの判断力が問われる展開になります。

定跡を深く覚えるより、相手の駒の位置を見ながら指すのが得意な人には相性があります。

相手を見て戦型を選べる

相手が矢倉へ組むのか、雁木系の形にするのか、早く攻めてくるのかを確認してから飛車の位置を決められます。

陽動振り飛車のデメリット・注意点

自分の駒組みも制約される

居飛車の含みを長く残すほど、自分も最初から振り飛車向けの理想形を作ることができません。

相手を陽動するために使った手が、飛車を振ったあとに働きにくくなる場合があります。将棋ウォーズでも、陽動側自身の陣形にも制約が生じる点が注意点として説明されています。

飛車を振るタイミングが難しい

早く振りすぎれば相手は通常の対振り飛車へ切り替えやすくなり、遅すぎれば自分の飛車を振る余裕がなくなります。

相手の囲いがどこまで進んだか、中央から仕掛けられないかを確認して決める必要があります。

奇襲だけでは有利にならない

相手が陽動振り飛車を知っている場合や、駒組みに柔軟性を残している場合は、戦型を変えただけで大きな得をするわけではありません。

飛車を振った後は、通常の振り飛車と同じように大駒をさばき、自玉を安全にする技術が必要です。

陽動振り飛車は初心者におすすめ?

将棋を始めたばかりの初心者には、やや難しい戦法です。

陽動振り飛車では、居飛車と振り飛車の両方の駒組みを理解したうえで「いつ戦型を変えるか」を判断する必要があります。

まず四間飛車や三間飛車など一つの振り飛車を覚え、美濃囲いの基本も理解してから挑戦すると使いやすくなります。

相手側の陽動振り飛車対策

駒組みを決めすぎない

相手がまだ飛車の方針を明らかにしていない段階では、対居飛車だけに適した形へ早く決めすぎないことが対策になります。

飛車が振られても対応できるよう、金銀の配置に余地を残しておきます。

飛車を振った直後に動く

陽動振り飛車側は、居飛車模様から振り飛車へ組み替えるために手数を使っています。

飛車を振った直後に陣形が整っていなければ、中央や飛車側から早く仕掛けることで相手に理想形を作らせない狙いがあります。矢倉の解説書でも、陽動振り飛車に対して急戦を仕掛ける考え方が示されています。

振り飛車になったら囲いを切り替える

相手が飛車を振った後は、必要に応じて舟囲い、左美濃など対振り飛車向けの玉形へ組み替えます。

陽動振り飛車と玉の囲い方

陽動振り飛車では、飛車を振るタイミングが遅いため、最初から美濃囲いの完成形を急ぐとは限りません。

飛車を振った後に玉を右側へ移して美濃囲いを目指すほか、駒組みの流れによっては右玉のような形へ変化することもあります。

重要なのは囲いの名前にこだわることではなく、戦型変更の途中で相手から仕掛けられても危険にならない玉形を選ぶことです。

陽動振り飛車についてよくある質問

陽動振り飛車は奇襲戦法ですか?

奇襲的な性格はありますが、単に相手を驚かせるだけの戦法ではありません。相手が相居飛車向けの形へ進んだのを見てから振り飛車へ変化し、駒組みの違いを利用する狙いがあります。

陽動振り飛車は必ず矢倉から指しますか?

必ずではありません。狭い意味では矢倉模様からの振り飛車を指しますが、広い意味では相居飛車模様から途中で振り飛車へ転じる作戦全般を陽動振り飛車と呼びます。

どの筋へ飛車を振るのですか?

相手の陣形によって変わります。四間飛車・三間飛車・向かい飛車などが候補で、特定の一つの筋に限定される戦法ではありません。

初心者でも使えますか?

使うことはできますが、通常の振り飛車より判断することが多い戦法です。まず一つの振り飛車と囲いを覚えてから使う方が実戦では分かりやすくなります。

まとめ

陽動振り飛車は、居飛車を含ませながら駒組みし、相手の陣形を確認してから振り飛車へ転じる戦法です。

おすすめ書籍

矢倉で勝つための7つの鉄則と16の心得

矢倉を指す側の視点から、陽動振り飛車への対応を扱っている棋書です。「陽動振り飛車には急戦を仕掛けろ」という項目があり、矢倉模様から振り飛車へ変化されたときの考え方を学べます。

→ 将棋の関連書籍を売店で見る