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渡辺名人VS斎藤八段 初防衛と初戴冠を懸けた戦い!第79期名人戦七番勝負展望

渡辺明名人に斎藤慎太郎八段が挑戦する、第79期名人戦七番勝負の開幕が近づいてきた。日程と開催地は以下のとおり。

第1局 4月7・8日(水・木) 東京都文京区「ホテル椿山荘東京」
第2局 4月27・28日(火・水) 福岡県飯塚市「麻生大浦荘」
第3局 5月4・5日(火・水) 愛知県名古屋市「亀岳林 万松寺」
第4局 5月19・20日(水・木) 長野県高山村「緑霞山宿 藤井荘」
第5局 5月28・29日(金・土) 神奈川県箱根町「ホテル花月園」
第6局 6月14・15日(月・火) 山梨県甲府市「常磐ホテル」
第7局 6月24・25日(木・金) 山形県天童市「天童ホテル」

 現最強の一角である渡辺名人が初防衛を果たすのか、それとも成長し続ける「西の王子」こと斎藤八段が奪取するのか。その動向を見守るにあたり、まずは両対局者にまつわるデータを確認しておきたい。

斎藤八段の変化

 挑戦者の斎藤慎太郎八段は棋士10年目の27歳。七番勝負第2局の前に28歳を迎える。
2020年度の成績は25勝15敗(勝率0.625)。詰将棋愛好家としても名高く、奨励会三段時代に詰将棋解答選手権チャンピオン戦で2連覇している。
第79期順位戦A級を通算8勝1敗で突き進み、挑戦権を獲得した。順位戦に参戦して9期目という速さも然ることながら、初A級の年に名人挑戦を決めた点も見逃せない。同ケースは第75期の稲葉陽八段、第74期の佐藤天彦八段(現九段)と近年にも存在するが、その前は第54期(1996年度)の森内俊之八段(現九段)まで20年も遡る。なかなか成しえない記録なのだ。

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2020年指し納めの順位戦A級6回戦で勝利を収めた斎藤八段。当面の目標としていた残留を確定させ、関西将棋会館から出るときには安堵の声も。写真:虹

 タイトル戦に登場するのは4回目。2018年度には第66期王座戦五番勝負をフルセットの末に制し、タイトル戴冠を経験している。通い慣れた東西の将棋会館以外、特別な環境での対局にも慣れてきただろう。
従来は「決断力」を自身の課題として挙げていた斎藤八段。その対策の一環として、A級のとある対局では1手に費やす時間に制限を設けたこともあるという。ただし本人いわく「私の場合は課題を意識しすぎるとマイナスに働くことが多い」と、その見方を改めたのが2020年度のこと。「思い悩みすぎず、自分の性格に合うものを判断しながらやっていく」とし、その後は「自分らしく楽しく戦うスタイル」に変化した。好調のうちは続けるというが、果たして七番勝負で出してくるのはどんなスタイルだろうか。

万全の渡辺名人

 渡辺明名人は棋士22年目の36歳。こちらも七番勝負第2局の前に歳を重ねる。
2020年度の成績は26勝15敗(勝率0.634)。2004年度に自身初タイトルとなる竜王の獲得後、常に何らかのタイトルを保持し続けてきた。将棋大賞の最優秀棋士賞に2度輝いている。
第76期に順位戦A級から陥落するも、第77期B級1組と第78期A級を通算21勝無敗で駆け抜けて完全復活。第78期名人戦七番勝負を4勝2敗で制し、自身初となる名人戴冠を果たした。

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名人奪取を決めた第78期名人戦第6局 撮影:金子光徳

 タイトル戦に関しては、今回が登場38回目、獲得28期、竜王と棋王の永世称号資格を有する、などその活躍は語り尽くせない。直近の2020年度にのみ焦点を当てるならば、棋聖を失冠するも名人を獲得し、さらに王将と棋王を防衛。これにより谷川浩司九段の持つタイトル獲得27期を抜き、歴代単独4位となったばかりだ。

両者の対戦

 トップ棋士同士でありながら、過去の対戦はまだ5度しかない(渡辺名人3勝、斎藤八段2勝)。そのほとんどが角換わりの相下段飛車だった。


角換わりの最新形のひとつ。速攻、待機戦術、端歩の省略、など細かく変化する。

直近局は3月に指されたばかり。そちらも角換わりではあるが、後手番の渡辺名人が棒銀を採用して斎藤八段を下している。それまで先手番がすべて勝利を収めていたが、唯一、後手番の勝局となった。

番勝負の戦型選択

 両者はともに純粋な居飛車党で、どの戦型でも指しこなす。変化球を投げない限りは相居飛車シリーズになると見てよいだろう。また、同じ相手と連続で対戦するのがタイトル戦の醍醐味だ。ここで過去のタイトル戦における両者の戦型選択を振り返っていきたい。

 渡辺名人はあらゆる最新形、急戦、力戦を散りばめる傾向にある。とにかく引き出しが多く、いろんなアングルから相手に研究手をぶつけている印象を持つ。
対する斎藤八段は先後問わず角換わり、特に前述のような下段飛車をよく採用していた。ただしその時代の流行形に特化する棋士でもある。実際に2020年度の公式戦では角換わりのほかに、元来得意とする矢倉をはじめ、相掛かりも積極的に指している。

 これらを踏まえると、軸となるのは最新形。過去に何度もやり合ってきた角換わり相下段飛車も登板するだろうか。とりわけ作戦巧者である渡辺名人の戦型誘導に注目したい。

本シリーズの鍵

 棋力、相性、体調などさまざまな要素が勝負の行方を左右する。十分に実力を発揮できるかどうかは、その妨げになるものをいかに減らせるかが重要だ。

 その点において、渡辺名人には不安材料が見当たらない。先日まで行われていた第70期王将戦七番勝負と第46期棋王戦五番勝負はそれぞれ、最終局を待たずして3月中旬の防衛で閉幕。もし長引いていたならば名人戦に対する準備期間も短くなったが、そこは余裕をもって、同時に気持ちよく照準を変えられたはずだ。また盤上の強さのみならず、タイトル戦という環境での経験値も高い。最後まで平常心を貫けることだろう。
対する斎藤八段は、かねてより自身が実践してきた「一局一局に集中する」を貫けるかどうか。これが本シリーズの鍵となるだろう。まず、タイトル戦に場慣れしたとはいえ2日制の経験はゼロ。9時間という持ち時間の配分をどうするか、封じ手に絡んだ駆け引きの云々、また封じ手から対局2日目までの過ごし方は何が自分に合っているか、など手探りな部分が多い。一方で、持ち時間が長いこと自体は斎藤八段の主戦場だ。これを味方につければ大きな武器となるのは間違いない。

 将棋ファン目線でいえば、渡辺名人の戦型選択の引き出し、斎藤八段の精神面と長考、これらに注目するとより楽しく観戦できると思う。将棋史に残るような熱戦を期待したい。

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